DJIのグローバル先行ユーザーとして、Mavic 2 ProとMavic 2 Zoomを使い初めておよそ2ヶ月が経過しました。今回の記事で私のレビューは終わりになりますが、最後に、2台のMavic 2を使い込んでいくうちに見えてきたさらなる魅力についてお伝えしようと思います。
1.安定性・安全性
Mavic 2が正式に発表されて以来、一般的に最も注目されてきた部分は、両機種ともに刷新されたイメージングシステムの素晴らしさでした。
そして発売後の多くのレビューやニュースもMavic 2 Proの搭載しているHasselbladと共同開発したカメラやセンサー、あるいはドリーエフェクトを始めとした映像表現の多様さを可能にしたMavic 2 Zoomのカメラを中心にレビューを書かれていると思いますが、私が実際に使っていて最も感銘を受けたのは、実は本体自体の安定性と安全性です。
それはもう、使えば使うほど違いがわかるレベルで、地味ですが最も大事な飛行の基礎的な強靭さをここまで引き上げてきたことに感銘を受けます。
その根幹をなしているのは、おそらく非常に強いプロポとの伝送の強固さなんだろうなと思うのです。本体の持つどのような高度な運動性能も、伝送自体が切れ切れになってしまえば、思わぬところで危険にさらされます。
これまでドローンを使っている時には、目視できるような距離でさえ、時に通信が不安定になるような経験もしたことがあるのですが、今回2ヶ月の間、これだけ長い時間を飛ばしながらMavic 2の通信が本体と途切れることは、ただの一度もありませんでした。Mavic 2から伝送システムはOcusync2.0に刷新されましたが、これが本当に素晴らしい仕事をしているのだと思います。
公式では5km先までボディとプロポの伝送が維持されるという仕様が発表されておりましたが、通信範囲の遠さが伸びれば伸びるほどに、近距離では一層その安定は増すというのは当然のことなのかもしれません。
その他にも起動直後のGPSのキャッチが圧倒的にすばやくなったことや、センサーが全方位になったことなど、安全に飛行をするための様々な性能がアップすることで、全てにおいて「安定性・安全性」が格段に増しました。多くの人に、今こそドローン参入の好機であると言えるのは、この点における格段の向上があるからなんです。
(光や風の強い海上でも、一度として伝送が切れたことがなかった)
2.改めて、小型化と静音化
Phantom 4 Proを使っていてこれまで何度も思ったのは、撮影中、すごく目立つんです。ボディやプロポ自体が大きい上に音がかなり大きいので、多少なりとも周りに人がいると、一身に注目を集めるようなことがよくありました。
でもMavic以降の小型化に加えて、今回のMavic 2からはさらに静音設計のプロペラが最初から付くことで、その存在感はこれまでと比べて格段にライトになっています。特にそれは、自分以外のドローンがいる現場で顕著な違いとして現れます。
前機種までは「何かすごい大きなものが飛んでいる」という感じなんですが、Mavic 2からは明らかに一回り小さな音になっています。一端空に飛ばしてしまえば、手元のプロポも小さいので、これまでよりもストレスフリーに撮影することが出来ます。
(浜辺のような音や視界を遮るものがない場所でも、以前よりぐっと撮影がしやすい)
3.さらなる可能性を秘めた多様な対応力。
次の3つの動画は、Mavic 2シリーズの場面に応じた対応力・即応力を良く示す例になっています。11月3日の滋賀県高島市にある雲海の名所、「おにゅう峠」で撮影したものです。まずは普通に「サークル」を指定して撮影した動画が次の一本です。
雄大な山紅葉と雲海が、Hasselbladのレンズによって遺憾なく4K動画として収められています。ため息の出るような美しさですが、一つこの動画には欠点があります。
雲海の「うねり」がゆっくりすぎるために、普通の動画の速度ではうまくその雄大さを表現できないんですね。それを克服するために、ハイパーラプス動画の機能を使ったのが次の2つです。
2つの動画は、ともに4分20秒の長さで125枚撮影した写真を、わずか5秒の長さに圧縮した動画です。特に2つ目の動画は、普段はめったに意識しない雲海のうねりがくっきりと写り込んでいて、圧巻の迫力です。これらはいわゆる「早回し動画」なんですが、これにさらにサークル回転を加えることによって、より強烈な動感が映像に宿ります。
これがMavic2が両機種とも搭載しているハイパーラプスと呼ばれる動画機能なんですが、その魅力は一度使うと病みつきになります。雲や海といった、それ自体非常に雄大な存在を撮影する時に強い力を発揮します。ですが普通、このハイパーラプスのような動画撮影は、撮影自体、困難を極める手法です。
それがこのMavic 2シリーズの場合は、ボタン一つで瞬間的にこうした動画を撮り始めることが出来ます。高画質に支えられた現場での対応力の大きさは、Mavic 2シリーズの大きな武器になるでしょう。
4.次から次へと湧いてくる「これを撮りたい!」
最後の一枚は、私自身にとってほとんど人生初とも言える「撮り鉄」をやってみました。
朝の光を受けてゆったりと走っていくカラフルな貨物列車、なんですが、流石に電車には寄れていません。安全性を最優先というのがドローンの鉄則です。
でも、こう思うんです。もしこの日、大雪が降った後だったらどうだろう?真っ白な雪原の中を、カラフルな貨物列車が走っていったら、それはこんな風に遠い場所からの撮影だったとしても、電車の存在感はくっきりと画面に映えて美しかったはずです。
そう、そんなことを「妄想」してしまいます。ドローンを使えば使うほど、我々の目は空から見られる「かもしれない」目線を体得していく。そしてこれまで挑戦しようとさえしなかった「鉄道」を撮ってみたいなんて思わせる程に、自分の殻を打ち破る手助けをしてくれます。
特にMavic 2の場合、これまでの機種よりもあらゆる面において「機動力」において優れています。それはボディ自体が機敏に動けるようになるということを意味するだけではなく、我々自身の「機動力」を手助けしてくれるんです。そう、ドローンがあなた自身の想像力の「翼」になります。
一つにはその準備の簡単さ。小さなカバン一つにシステム全部をまとめることの出来るコンパクトさゆえに、ストレスを感じることなくすばやく撮影に入れます。そしてもう一つは軽さ。大きなカバンをもう一つ増やすことなく、最低限の重量負担で色々なところに持ち出せるのは、我々の「足」という基本的な機動力を助けてくれるものです。
こうした様々な意味での軽快さが、我々の想像力を「次へ、次へ」と推進する羽となって、皆さんの撮影をさらに助けてくれるようになるはずです。Let’s see the bigger picture!
別所 隆弘 (Takashiro Bessho)
滋賀県在住。フォトグラファー。アメリカ文学研究者。National Geographicが主催する「Nature Photographer of the Year」の「Aerials(空撮部門)」2位やニッコールフォトコンテストなど、国内外の写真賞を多数受賞。写真と文学の融合を試みるのが最近の関心事。