DJI Mavic 2 Pro。小さな機体、そして搭載された1インチCMOSセンサーを持つ高性能 Hasselbladカメラ。今回のレビューでは高性能カメラと小さな機体の二つの特徴にポイントをおいて、Mavic 2 Proの魅力をご紹介します。
Mavic 2 Proに搭載されているL1D-20cの大きな特徴は、そのセンサーサイズ、ダイナミックレンジの広さ、ビットレートの高さ、被写界深度の深さに加えて、Hasselbladが独自に開発したハッセルブラッド ナチュラルカラー ソリューション(HNCS) 技術により、色彩の細部まで忠実に再現された自然な色彩を表現できる事です。まずはその特徴を最大限活かすシチュエーションとして、ドローンライティングに照らされた光きらめく紅葉をMavic2Proで撮影しました。
Mavic 2 Proのもう一つの大きな特徴は、搭載しているセンサーサイズに似合わない機体の小ささです。この小さい機体に高画質のカメラが搭載された事で、新しい映像表現ができるようになりました。今までは周囲との距離が近い、あるいは被写体との距離が近いような環境で撮影する場合には、どうしても飛行方法や映像クオリティーにおいてどこかで譲歩しなければなりませんでしたが、Mavic 2では間違いなくその自由度が広がりました。紅葉の森の中を軽やかに飛び回るMavic 2 Proをご覧ください。
Hasselblad L1D-20cのクオリティー
Mavic 2は、Mavic Proからの機体サイズはそのままにPhantom 4 Proと同等あるいはそれ以上の性能を持ったカメラを搭載している機体です。Mavic Proではそのセンサーサイズ、絞りがオートなど、いくつかのカメラ性能において、クオリティーの向上が期待されていましたが、Mavic 2では、その点が全て改善された形となり、さらにビットレートの向上、ハッセルブラッド ナチュラルカラー ソリューション(HNCS) を搭載することで、独自のカラープロファイルによって色を正確に表現できるようになりました。
Mavic Proでは被写体によってはモアレが出たり、独特なカラープロファイルだった為に、映像によってはそれとなく機体の想像がついてしまいましたが、その点は大幅に改善され、より自然な色彩を表現できるようになりました。また、ピントに関してもPhantom 4 Pro並みのシャープさを持ち、その点においても性能の大幅な向上を確認できました。
森の中のナイトフライト
夜の紅葉の撮影では、木々が密集した街灯もないような真っ暗な森の中を飛行しましたが、Mavic 2の新しい機能がその撮影の心強い味方となってくれました。それは暗い場所での飛行においてビジョンセンサーを補助してくれる底部補助ライトです。これは離着陸時など暗い場所における低高度飛行では非常に有効でした。暗い環境においてはビジョンセンサーが機能しないため、GNSSが捕捉できない状況での低高度夜間飛行は非常に気を使います。離着陸する場所の明るさを確保するなどの対策をとったとしても、機体自体が離着陸する場所を離れてしまうと意味がありませんでした。
今回の撮影は森の中という事もあり、十分な数のGNSSが補足できない状況でしたが、「底部補助ライト」が大きな力を発揮してくれました。デフォルトでの設定は「自動」になっており、高度約5mになると自動で点灯・消灯します。また、手動でのオン/オフの切り替え設定も可能です。今回は常時点灯に設定して飛行し、底部補助ライトはビジョンセンサーの補助だけでなく、暗闇における機体の位置確認にも大きな力を発揮してくれました。機体ステータスインジケーターとフロントLEDライトは見えなくなっても、底部補助ライトの光はしっかりと目視することができ、機体の位置を見失うことなく飛行できました。
安定した飛行性能
今回の撮影では、すべてトライポッドモードで飛行しました。被写体に比較的近い距離や周囲との距離が取れない環境において、ゆっくりとした滑らかなカメラワークを行う場合に大きな力を発揮してくれます。以前のMavic Proでは、離陸後にホバリングし、DJI GOアプリからインテリジェント・フライトモードを選び、さらにその中からトライポッドモードを選択して設定する必要がありました。Mavic 2からは送信機の右横のスイッチでPモード(ポジショニング)・Sモード(スポーツ)に加えて、Tモード(トライポッド)が選択できるようになったので、非常に簡単に設定することができます。また、Tモードでは左右方向の障害物検知システムも有効になるので非常に安心ですね。(※今回の撮影では周囲との距離が非常に近かったために、あえて障害物検知システムはオフにして飛行しました)
スムースな機体の動きを行うのに有効なトライポッドモードですが、何点か注意が必要です。まずトライポッドモードは、スティックの応答性が下がるので、制動距離が長くなります。その動きを加味してフライトする必要があります。また、バッテリーの交換などで一旦機体の電源を入れ直す場合には、たとえスイッチがTモードになったままの状態であっても、Pモードにリセットされます。従いまして、引き続きTモードで飛行したい場合には、離陸する前に一旦スイッチをPモードに入れてから再度Tモードに入れる必要があります。しっかりとディスプレイでフライトモードを確認してから飛行しましょう。
プロペラ音の静粛性
もう一点特徴をお伝えしたいと思います。それはプロペラ音の静粛性です。とにかく静かです。近くに川が流れている場所では、機体が10mも離れてしまうと、流れる水音にかき消されてしまうほどでした。また、紅葉の森の中で撮影している時は、ドローンが飛行している事に観光客が全く気づきませんでした。これは観光地など周囲への配慮が必要となるような撮影地によっては、周囲への迷惑を軽減することができます。撮影地によっては、得てしてドローンが離陸した途端に注目を浴びてしまい、みなドローン目線になり、不自然な人の動きになってしまうことがありますが、それを防げます。かと言って音が全く聞こえないというわけではなく、ある程度遠くに機体が飛んでいっても、不思議な事に位置方向がわかるくらいにプロペラ音を確認できました。
Mavic 2 Proはそのカメラのクオリティー、機体の大きさ、安定した飛行性能において、素晴らしいバランスがとれた機体だと確認する事ができました。カメラバックに入っている長玉レンズの替わりにMavic2Proをそっと入れるカメラマンが今後ますます増えていくことでしょう。
airvision(株式会社アマナビ)
ビジュアルコミュニケーションのエキスパートであるアマナの空撮部門を担う。2011年よりドローンによる空撮事業を行なっている国内有数の空撮の専門集団。今年より産業向けドローン事業を行うairvision surveyを立ち上げた。

DJI Mavic 2の操縦と動画の編集を担当

ライティング用ドローンの操縦を担当

ライティング用ドローンのライトコントロールを担当